大阪、肥後橋「HAJIME」のオーナーシェフで、米田 肇さんという方がいらっしゃいます。
立場は違いますが(ましてあちらは大変著名な方ですが)、後進に指導する立場での考え方、伝えたい思いに共感し、「そうそう、私もそういうことが言いたいの!」と頷くことが多い記事をたくさん書かれています。
今回、その中でも「わが意を得たり」と思った素晴らしい記事がありましたので、ご紹介させてください。日々、私も同じことを考えながら、生徒の皆さんに繰り返し繰り返し伝えています。
「褒めて育てる」という考え方だけでは なぜいけないのか。
教室のコンセプト「たのしく きびしく おもしろく」
― この中に敢えて「きびしく」も入れたのはなぜか。
ぜひ読んでみていただきたいです。
『親心』
「おいおい、そんなこともできないのか?」
この業界に入り、10年くらい経験してきた経験者でも基本の作業ができていないことがあり、驚くことがあります。
これはまず本人自身の勉強不足、練習不足、分析不足が基本にあるのですが、それでも、
「なぜ、この子の周りにいた人は、今まで誰もきちんと教えてあげなかったんだろう」
と私は正直本気で腹が立ちます。
誰も面倒をみてあげなくて、指導をしてあげなかったから、このように今になって基本的なことでつまずく羽目になっているのです。これまで周り人は何をしていたのでしょうか?こんな状況が良いわけがありません。
だからこそ、私はどんな人にでも
間違っているものは、間違っている。
正しいものは、正しい。
ときちんと伝えるようにしています。
間違っている時や勘違いしている時はどんな些細なことでも見逃さずに、オブラートに包まずにきちんと伝えるようにします。
その内容は、技術的な面はもちろんのこと、「なぜそうなっているのか?」「なぜそうなってしまったのか?」という根源にある本人の適当さや精神の弱い部分についてもきちんと話します。
伝えられた相手はキツく感じ、落ち込むことやウザいと感じることもあると思います。それでもきちんと伝えることが大切だと思うのです。なぜなら、それは当の本人が後々になって困らないようにするためです。それは正に
「親心」
なのです。親は将来自分の子が困らないように生きる術を教えていくものです。それはできるだけ早い方が良いのはわかると思います。
もちろん、伝え方やタイミング、時には伝えずに見守ることも大切です。それでも、それは本質を理解してもらうための方法であって、伝えないということではありません。大切なことは、後々のことを考えてできるだけ早い段階で理解してもらうように努めることです。
特に技術職の仕事はたくさんの技術を覚えていかなければいけません。そのため正確に覚えていかなければ、後々適当なものの積み重ねになります。きちんと中身の詰まったブロックであれば、高く積み上げられるように技術も同じなのです。もし中身がカスカスのブロックであれば、どこかでブロックが崩れてしまいます。そうなると、何をしてもいい結果が出なくなり本当にかわいそうなのです。
逆に「子心」を考えると、注意をされた人は大抵落ち込んだり、へこんだりすることが多いですが、修正することはできるだけ早い方がいいので落ち込んでる場合ではありません。間違いに気付いたら、できるだけ早く修正できるような対策を練り、正しい方向に導けるように策を練る必要があります。なので、逆に指摘されるようなことがあれば、早い時期に気づくことができて「ラッキー」と思うくらいに思うといいです。
技術をつなぐこと、そして、その技術を超えることで多くの技術は進化をしてきました。だからこそ、教える人は「親心」をもって、次の社会をつくっている気持ちで指導をしていかなければいけませんし、学ぶ人は真摯な心で丁寧に学び、前の世代を超えていく気持ちが大切だと思います。
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先日、昔うちで働いていた京都にあるMOTOIの前田元シェフが食事に来てくれました。その時に、
「あの当時、叱れてばかりで正直理解ができなかったですが、今は上に立った時にやっと理解ができて、本当に宝物をたくさん持たせていただいたと感謝しています!毎日毎日ハジメさんの言葉を思い出します!」
と、とてもうれしい言葉を伝えてくれました。
「今すぐでなくてもいい、いつかわかればいい」そう思って伝え続けた言葉をきちんと持ち続けてくれて、今はシェフとして活躍してくれていることが本当にうれしく思います。