「春からどうするか、考えておいてね」
数か月前、そう伝えておいた高校2年生のRちゃん。中学受験や高校受験の場合は、数か月お休みしたあとは復帰…という子が多いのですが、大学生になると県外へ出る子も多く、通常、ほとんどの生徒は大学受験を機に、うちの教室を卒業することが多いのです。
先日、「今月で卒業…しよっかなーって…」と、ポツリと言いました。
おお… そうなのか、そうなのね…!と、わかってはいるものの、この瞬間って何年やっていても慣れませんね、寂しさが急に押し寄せてきました。でもここはドライに(笑)
「今度のレッスンには、母も挨拶に来ると言っていますので」とRちゃん。
次のレッスンにはお母さんもいらしてくださり、少しお話しました。Rちゃん母子は、気ごころの知れた友人のような、時には姉妹のような、仲の良い母子なのが伝わってきていました。お母さんが連絡事項があるときに送ってくださるメールも、私への敬意のこもった、メールマナーをわきまえたとても丁寧なメールで、お人柄がうかがえるような方なんです。
この日のレッスンは、連弾の練習でした。Rちゃんがプリモで、私がセコンド。
チック・コリアの「スペイン」という曲で、私の大好きな曲でもあります。ラテンのリズム特有の、裏拍にある気怠さ、泥臭さ、物悲しさ…といった目に見えない“行間” を伝えるのって、なかなか難しい。
でも、私の息づかいを感じ取りながら、懸命についてくるRちゃんの成長ぶりが嬉しくて。
別に弾いている曲も、何度も格闘しているのでしょう、楽譜のページがちょうどめくれるあたりで破れています。私の楽譜にも同じように破れてしまうページがいくつもあって、ああ、こういうところまで似てしまうのねぇ^^; と苦笑い。
「あと残り数回、楽しくやろうね!」といってこの日のレッスンは終了。
挨拶をして退室したかと思いきや、ドアのところで何やらRちゃんと誰かの声。「せんせーい!あのー…」呼ばれて行ってみると、Rちゃんのおばあちゃんがいました。
あら!さっきはお母さんで、今度はおばあちゃんまで!!
おばあちゃんは、Rちゃんがうちへ習いに来たことでピアノが益々好きになったこと、教室を卒業することを決めたとき、泣きながら両親へ報告していたこと、とても感謝している…といったことを話してくださり、もう泣きそうでした。(少し泣きましたw)
私が伝えたいのは、自分と向き合い、自分に嘘をつかないこと、ごまかさないこと。そのような心構えを持っていれば、ピアノは誰にでも弾けるようになります。いえ、ピアノだけでなく、いろいろなことを乗り越えられるようになります。Rちゃんは既にその心構えを持っていましたから、レッスンで教えることは簡単でした。スポンジのようにスゥ―ッと吸収していったのです。
次々といろいろな曲を渡してきましたが、そのたびに自分の限界を突破して、自分の世界を音楽へ投影し楽しそうに弾いている姿を見て、「この子は本当に音楽が好きなんだなぁ」嬉しく思ったものです。
放任もせず、過保護にもせず、ちょうどよい距離感で彼女を見守り続けた、ご家庭の子育ての賜物だと思います。ピアノを長く続けられる子というのは、本当に不思議なくらい、ご家庭の姿勢に共通するもの(click or Tap!)があります。
Rちゃんは既に志望校を決め、勉強もがんばっているようで、良い評価も出ているようです。彼女も、先のEちゃん同様、きっと自分の決めた道を進むに違いありません。それだけの力を、Rちゃんはピアノを通じて身に着けましたから!