「同じ私の子で、同じ環境で育てているのに、なんで正反対なんだろう?」
兄弟姉妹を育てていて、こんな疑問を感じている方はいませんか?
不思議ですよね。同じように育てているのに、兄弟ってなぜあんなにバラバラに個性が散らばっているんでしょう。
これには、生物学的にちゃんと理由があります。生きものというのは、いかに多くの遺伝子を残し続けられるかという命題に向かって、生の営みを続けています。
例えば、突然 流行性のウィルスが蔓延したとします。どの遺伝子もまったく同じだったら、全滅してしまいますよね。ウィルスに弱い遺伝子は淘汰されたとしても、耐性のある遺伝子があれば、その種(しゅ)は生き残れる。だから生きものは、できるだけいろいろな種類の遺伝子をたくさん産み出そうとしていて、これは自然なことなんです。
人間も同様。なので、同じ両親から生まれた子どもでも、どの子もみんな違っているというわけなのです。違っていて当然なんですね。
習い事も、その子 その子に合ったものを選ぶのはとても大切。ピアノが向いている子もいれば、鍵盤楽器じゃなくて管楽器や弦楽器の方が合っているという場合はあり得るのです。
「下の子も上の子と同じように習わせないと、あとになって『どうして私だけ習わせてくれなかったの』と言われちゃう」と、単純に思わない方がいいかも知れません。
兄弟姉妹による向き・不向きの傾向ってあるのかも知れませんね。そういう研究をしている人っていないのかしら。おもしろいですよね(^^)
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このことをふまえて、うちの教室では最近、ご家庭のご協力を得て、あるトライアルをしています。これは長年、私が試してみたいことでした。
皆さんの中には、兄弟の送迎を一度に済ませるために、同じ曜日に、連続した前後のレッスン枠へ入れて、教室へ通わせている人はいませんか?兄弟姉妹を一度に教室へ送り届ければ、まとまった時間が空くので、主婦としては忙しい夕方は助かりますよね。
トライアルでは、このお母さんの利便性を手放していただくようお願いし、違う曜日に、兄弟バラバラに来ていただくことにしたのです。
すると・・・
予想どおり。兄弟それぞれにとてもよい効果が表れています。
生徒と先生の1対1の空気が、ほどよい緊張感と、ほかの誰か≒兄弟の視線を感じながらピアノを弾かなくてもよいというリラックス感をつくっていて、一人一人が落ち着いてレッスンを受けられるようになったのです。
兄弟って、本当に正反対の性格をしていて、一方はハキハキしていてスピード感はある・ただし落ち着きがない/ もう一方はおっとりしていてボ~ッとしている・でも単純素直でコツコツ屋・・みたいなことってありませんか?( 「うちがそうだわ~」って思いながらここを読んでいるお母さんがたくさん浮かびます・笑)
正反対のタイプが自分のやっていることを傍で見ている、なんなら、兄弟なので遠慮なくツッコミを入れてくる、お家へ帰ってママに「今日ピアノで○○ちゃんがこんなことやってたよ~」って告げ口される・・等々、兄弟って牽制し合っている部分ってあるんですよね。
そういうものが無くなった途端、肩の力が抜けて、誰にも遠慮することなく、“自分” を出してレッスンに向かい合えるというわけなのです。
子どもは繊細なので、こうした目に見えない雰囲気や環境を無意識に察知し、行動や心持ちが変化しやすい傾向があります。
このことは随分前から気づいていたものの、お母さん達の夕方がどんなに忙しく大変かを知っているだけに、なかなかこのトライアルを提案することができなかったのですが、
ひょんなことからタイミングが合い、幸運なことにこの提案を快諾くださるお母さんが複数現れて、現在その効果に驚いています。
写真の彼も、いつもどこかそわそわして、じっとしていられない様子があったのですが、一人で教室へ来るようになってからは、自分のペースをつかみ始めていて、写真のように一旦手を止めてじっくり “考える” という行為が多く見られるようになりました。
効果はいろんな面に波及するのか、道具もていねいに扱うようになり、私の話も落ち着いて聞けるようになりました。お家での練習量も増えているということです。
これを実現するためには、お母さんは送迎のために家と教室を何度も往復しなくてはなりませんが、親の都合と子どもの都合のどちらを取るか… それは、ご家庭の教育方針にもつながることですので、よくよく考えてみてください。(教室では強制はしていません)
面倒臭いことを引き受ける…それは、習い事をする子ども本人だけではないということなんですね。さて、ここをご覧のお母さんは、どのように思われたでしょうか。