「うちの子、ピアノは向いているでしょうか?」
時々、こんなご質問を受けることがあります。ピアノの向き・不向き… うーん、どうでしょうか。ピアノが上達するための道は幾通りもありますし、環境やご家庭の方針にも左右されますし、一概に「コレ!」という決定打は見当たりません。
ただ、長年このお仕事をしてきて、なんとなーく傾向ってあるのかも知れないなと思うことがあります。ピアノに限らず、スポーツやほかの習い事の指導をしている先生皆さんが、同じようにお話していることなんですが、
①面倒臭がらない
②遠回りしながらも、試行錯誤することをやめない
③素直である
才能やセンスがあったとしても、この3つが備わっていないと、上達は期待できないのだと思います。
ところで②なんですが、これは、“自分に対して負けず嫌い” ということでもあります。ほかの誰かに対して負けず嫌いを発揮して、押しのけてでも自分が勝ちたい、というのではなくて、
「昨日の自分」より「今日の自分」!といった、負けず嫌いの矛先が自分へ向かっているような子のことです。こういう子は、試行錯誤して苦しいときも、投げ出さないでやり抜きます。投げ出す自分は負けたようで悔しいから、やめないのです。
そうした意味では、音大時代の同級生たちは皆、負けず嫌いでした。音大は、友達でありながら、コンクールやオーディションではライバルになります。
音楽を専門に進学する域にまで来た子たちというのは、ライバルに嫉妬心を抱くことさえ恥ずかしいこと、という究極の負けず嫌いなので、足をひっぱったり、押しのけてまで勝とうということはしません。
人との対比ではなく、自分の実力で評価を得ようとがんばります。それぞれが誠実に努力していることを知っている者同士なので、最後には互いの健闘をたたえ合うことができます。私は音大で初めて、本当の良きライバルたちと出逢えました。
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話が脱線しちゃいましたね^^;
さて、あるレッスンで「これは①と②だな^^ 」と微笑ましく思えたシーンがありました。
今、彼女は一所懸命 読譜のためのトレーニングをしています。うちの教室では、ト音記号とヘ音記号を同時に平行して学ぶのですが、よくある現象として、ト音記号とヘ音記号を鏡文字のように入れ替えて読み違える‥というものがあります。主に小学校低学年でよく見られます。
こうした場合には、五線譜で自分で実際に書く課題を渡します。その子の弱い部分を強化するために、一人一人、オーダーメイドの課題をつくっています。
このとき、このSちゃんは、お手本のページと課題のページを何度も何度もめくって確認し、指で数えて、確かめる作業を繰り返していました。
要領の良い子は、同じページ内のどこかに “答え” がないかチラチラ見てうまく探し出し、そのままそっくり書き写します。これはこれで、要領の良い方法ですので、間違ってはいません。要領の良い子は、合理的で、飲みこみの早い場合も多いです。
ただ、こうした合理的なタイプは、泥臭く努力をすることが苦手です。ですので、どこかの時点でスランプに陥ったときに、簡単に答えを見つけられないことにイライラしてしまい、浮上できずに苦しむことになります。そのまま辞めてしまう子もいます。
一方、Sちゃんのように、面倒なやり方で時間がかかったとしても、本人はそのこと自体にあまり自覚はなくて、ひたすら「何の音かを探す」というゴールに向かっているという行動をする子は、可能性があります。
ここで注意したいのは、その良い芽を、周りの大人が気づかずにスルーしてしまうこと。
子どものこうした様子をすかさず見つけて、褒めてあげるのです。こういう作業をしている時に「おもちゃ片付けなさい」とか「プリントは出したの?」などと声をかけて、ほかの事に気持ちがそれてしまうことのないよう、ぜひ集中させてあげてください。
途中で疲れて「もうやだ」とか「やーめた!」と言い出した場合には、「キリのいい所までやってから終わりにしなさい」「あともう少しじゃん。途中でやめたらダメだよ」と声をかけてあげてください。ここでは、言い切り型で断言したアドバイスにした方がいいですよ。
「キリのいい所までやったら?」という投げかけ型で本人に判断をさせる方法だと、「やだ!」と本人は拒否しちゃいますので、そこは上手に大人が誘導してあげて、成功体験するところまで引っ張ってあげてみてください。
…とまぁ、これはレッスンでやっていることでもあるんですけれどね。
言葉がけ一つで、子ども達って変わります。いつも優しく、怒らないように…と無理をするのではなく、そのときの状況に合わせた言葉のチョイスが大切!と、考え方を少し転換してみると、結果的に怒らずに済んで、肩の力が抜けると思いますよ。とはいっても、怒っちゃうことってありますよね。それはそれで、泥臭くていいんじゃないでしょうか。(^^)