『守・破・離』という言葉をご存じでしょうか。武道や芸事の世界で古くから大切にされている考え方で、師にものを習う際の、弟子の成長段階を表現した言葉です。
『守』基本の型を身に着ける段階
『破』その型を破って応用する段階
『離』それらに創意を加え、自分独自のものを追求し確立する段階
私のレッスンでは、まず最初の『守』の段階を非常に大切にしています。基礎がしっかりしていないと、その上にどんなに素晴らしい家を建てても簡単に崩れてしまうのと同じだからです。
守【基礎基本の徹底的な習得】
まだ練習方法がわからないであろう低学年には、細かく詳しく説明したり、お手本やヒントを先に提示したりしながら、その場で一緒にやってみて「出来た!」という成功体験を持ち帰ってもらいます。こうして音楽の「引き出し」をたくさん作ります。宿題は、その成功体験をキープすることのみ。難しいことは宿題にしません。ただしお家で必ず練習を継続する習慣づくりをしていただきます。この時期は、一番効果が表れにくく、ピアノを途中で辞めてしまう人が多い期間でもあります。
破【応用させる力を身に着ける】
そろそろ自立へ向かって欲しい中学年には、こちらからすぐに説明するのではなく、まず「自分ではどう思う?」と質問を多くし、自分で考える機会を増やします。 そして「次までに( 間違えてもいいから )やってきてごらん」と宿題にします。生徒は、これまでに培った「引き出し」を頼りに自分なりに試行錯誤します。
よく出来ている所は褒め、よくない所は直し方や別の練習方法を伝授します。 このとき「失敗や間違いは悪いことではなく、そのときにどう直すかが大切!」と伝えています。今どきの子どもは、失敗することをとても怖がります。それらしい理由をつけて、問題から目をそらしてしまうのです。また、失敗していることすら、自覚できていない子もいます。
うまく出来ていなくても、努力の跡や、乗り越えたいという意思が見られるときには、決して怒りません。ごまかしたり、その場しのぎの上辺だけで済ませようとしている時には、それでは何も解決しないことをハッキリと伝え、乗り越えるまで、粘り強くレッスンします。こうして「やれば出来る!」ということが本来どういうことなのかを身をもって体験できた子はブレイクスルーし始めます!
離【自分自身の “ 音楽 ” を開花させる】
高学年になる頃には、いよいよ自立の時期。
これまで習った練習方法を組み合わせて、家で自分なりに曲を完成させてから教室へ来てもらいます。 レッスンでは、生徒の音楽観を考えながら、ほかの解釈や曲想の仕上げ方、音色の良し悪しなど、楽譜には書かれていない、様々な情報を提供するようにしています。この時期は練習も「量より質」が大切になってきます。
このころからだんだん、師弟間で共に「音楽を作っていく」という感じになってきます。音楽の醍醐味が味わえて、楽しい時間を過ごせるようになってくる時期です。
ここまでくれば、自分の好きな曲を自由に弾けるようになりますよ!